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Just What the Doctor Ordered / Razor White
失恋船長 ★★★ (2025-04-20 03:00:39)
90年代の頭にリリースされたフルアルバム。彼らの正式な音源はこれだけなのだが、マイナーなThunder Recordsからのリリースだけにマニアにしか知られていない激レア盤。オリジナルは高額の取引となるのだが、ポルトガルのLost Realm Recordsから再発、正規品なのかという疑問もあるのだが、この幻の一品が世に出たのか快挙である。

初期のメンバーにフィル・アンセモがいた事でも知られるバンドだが、今作ではLillian Axeのスティーブ・ブレイズがエンジニア兼プロデューサーとしれ名を連ねる。


オープニングナンバーのBackdoor to Heavenでは、このバンドらしい硬派なメロディックスタイルのメタルサウンドを聴かせてくれるも、次のGet Close to Meではファンキーな時流に合わせた曲の登場、その落差に驚いていると、バラードが流れ、メロディアスな曲が続く。そして6曲目のSomedayは中盤のハイライトとしてアルバムを盛り上げる、メタリックなBON JOVIのRUNAWAYと言われているが、なるほどと納得させる出来映え、このバンドの本質はどこにあるのか、少々混乱するのだが、デビュー作&時代の流れという節目にリリースというのが、こういうバラエティ豊かな作風に繋がるのだろう。7曲目もアコースティカルなバラードが顔を出し、コンパクトな楽曲を並べバランス良く聴かせてくれる。

メロディが強めの叙情派アメリカンハード路線が続くので、2曲目はちょっと相性が悪いのだが、そこは趣味趣向の問題だろう。ODINからヌメリをとったような哀愁のハードサウンド、マイナーな存在だが、音楽性はメジャーフィールドを意識した作りを施しており、FIREHOUSEなどを愛するマニアには十分過ぎるほど魅力を感じるだろう。
またLillian Axeは絡んでいるが、あそこまで本格的なサウンドにはなっていないのも敷居の低さに繋がっている。曲がコンパクトなので、少々淡泊に聞こえるかもしれないが、どの楽曲もフックがあり、メロディに気を配っている。

ベタさも絶妙。ド派手は決め技は無いのかも知れないが、人間魚雷でお馴染みのテリー・ゴディばりな堅実な試合運びをしてくれるバンドだ。
どの路線を支持するかで評価も変るだろうが、メロディ重視のサウンドを、バランス良く配分してくれたら、これ幸いなのですが、今作をもってバンドは解散。

時代が違えば国内盤もリリースされ、日本でも人気を掴める作風だったろう。残念である。ノスタルジックなサウンドではあるが、その○○風味を込みで大いに楽しんで欲しい。アメリカの良心のようなサウンド。ラジオフレンドリーな曲も巧みに並べ、可能性を秘めた作風を作り上げた。

デモ時代とは違うという視点もあるようだが、これはこれで大ありだ。もっと認知されてもおかしくないバンドですよね。

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