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The Sick, the Dying… and the Dead! / MEGADETH
火薬バカ一代 ★★★ (2025-04-10 01:10:19)
グラミー賞を受賞したかと思えば、コロナ禍、デイヴ・ムスティン(Vo、G)の咽頭癌発覚、盟友デイヴ・エレフソンの解雇…と、禍福は糾える縄の如しを地で行く時期を過ごしたMEGADETHが、6年のブランクを経て’22年に発表した16thアルバム。
そうした状況がどの程度ムスティンの曲作りに影響を与えたのかは定かではありませんが、本作においては(初期作を思わすアルバム・タイトルからして)明確に原点回帰を志向。ミドル・テンポでスタートし後半で一気にギアを変える①、鋭角的なGリフがスピード感を倍加させる②③、バラード調に始まり中盤で再びテンポアップする④という序盤の畳み掛けの時点でアルバムの完成度を確信するには十分ですし、これが加入2作目にして残念ながら最終作と相成ったキコ・ルーレイロの置き土産的キレキレなGプレイが炸裂する⑫は、初期の名曲に通じる尖がり具合に痺れる(先行公開されたのも納得の)名曲に仕上がっていますよ。
正直、かようにサウンドが初期作の色合いを強めれば強めるほど、舌鋒鋭くリード・オフマンの役目を担っていたかつてに比べ、キーを下げ、楽器陣を後ろから追いかけるように歌う現在のムスティンのVoスタイルとの乖離が気になってくるのですが、リリースから2年以上も聴き込んでいれば流石にもう慣れた。それに緊迫感を伴って引っ掛かり気味に進行する⑤、ポップではないがキャッチーでメロディアスな⑨、BUCK-TICKの“悪の華”みたいな⑬(実際はDEAD KENNEDYSのカヴァー)といった、ミドル・テンポの楽曲に関しては説得力十分に歌いこなしており、収支で言えばプラスの方が勝っているんじゃなかろうかと。
今後に関しては若干の不安を感じつつも、まずは健在ぶりを示してくれて一安心な1枚。
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