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A Sultan's Ransom / CLOVEN HOOF
火薬バカ一代 ★★★ (2025-03-14 00:45:24)
NWOBHM勃発と時を同じくして結成され、既に活動開始から40年以上を数える現在も唯一残るオリジナル・メンバー、リー・ペイン(B)を中心にアルバム・リリースを重ねている英国はミッドランド出身の古豪CLOVEN HOOFが’89年に発表した3rdアルバム。
前作からメンバー・チェンジなく制作されている本作で披露されているのは、これまでの作風を順当に受け継いだ、湿り気とドラマ性を兼ね備えつつ決して大仰にならない「嗚呼、ブリティッシュ」なHMサウンド。'89年ったら既にメタル・バブルを通り越してHR/HMシーンが飽和・拡散を始めていた時期ですが、そうした流行り廃りにまるで頓着を感じさせない、頑固なのか天然なのかよう分からんがともかくその意気や良し!な仕上がりとなっています。強いて言えばプロダクションに関しては若干の向上が図られてはいるものの、これが今聴き直すと、安普請だった前2作よりも80年代然とした本作の音作りの方がずっと古臭く感じられてしまうのですから皮肉な話。
とはいえ、収録楽曲はそうしたハンデをモノともしない強力な出来栄えを提示してくれており、特に『聖闘士星矢』主題歌〝ペガサス幻想“を彷彿とさせる②、パワフルに押し出す③、〝千夜一夜”のタイトルに相応しくエキゾチックな雰囲気を纏った⑤、IRON MAIDENからの影響を伺わせる⑦、本編フィナーレをドラマティックに盛り上げる⑩等は、聴き手がCLOVEN HOOFに求めるものをきっちり提供してくれる頼もしい名曲に仕上がっています。
バンドはこれを最後に一旦解散し、2000年代に入って再評価の声に後押しされ再結成。それも当然と思わせてくれるだけのポテンシャルが備わった(ひとまずの)最終作ですよ。
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