本田美奈子のキャリア低迷期として、今となっては顧みられる機会もないMINAKO WITH WILD CATSが’89年に発表した2ndアルバムにして末期の1枚。 一応はバンド名義なのに相変わらず本田以外のメンバー表記はなし、更に豹柄衣装を身に纏った彼女をジャケットに戴き、『豹的』と書いて『TARGET』と読ませる昭和最後の年/平成最初の年のセンスに冷や汗が垂れる向きもあるやもしれませんが、“あなたと、熱帯”みたいな芸能界的ノリの楽曲が姿を消した今作は、前作以上にメロディアス・ロック路線で統一が図られており、キャッチーな“HEARTS ON FIRE”、哀愁を湛えた“WALK AWAY”、ドラマティックなバラード“愛が聞こえる”等、本田の卓越した歌唱力を生かした楽曲が並ぶ本編は聴き応え十分の仕上がりとなっています。 その一方で、THE BEATLESの名曲“HELTER SKELTER”、カナダ出身の女性ロック・シンガー、リー・アーロン/JOURNEYのジョナサン・ケイン/WRABITのジョン・アルバニ共作曲“HEAT ON ME”、スタン・ブッシュとジョナサン・ケインという稀代のメロディ・メイカーのペンによる“SURRENDER”を日本語詞で収録する等、カヴァー曲多めの構成となっているのは、当時の彼女の洋楽志向の発露ゆえか、単に制作時間がなく弾数不足だっただけなのか?ともあれ、いずれも優れた楽曲なのでカヴァー自体に文句はありませんし、難曲として知られる“HELTER SKELTER”に果敢に挑むを様を聴けば、「アイドル上がりでしょ?」ってな偏見もぶっ飛ばされるというものじゃないでしょうか。 この路線でもう2、3枚はアルバムを聴いてみたかったですよ。
オフコース解散後、ソロ・アーティストへと転じた小田和正(Vo)が渡米してレコーディングを行い、'86年に発表した1stアルバム。 それまでオフコース時代の代表曲“さよなら”ぐらいしか知らなかったこの人に興味を持つようになったのは、ご多聞に漏れず“ラブ・ストーリーは突然に”のメガヒットがきっかけ。とはいえソロ・アルバムまで追いかけてみようとは思っていなかったのですが、何となくレンタルCD屋で本作を手に取ってクレジットをチェックしてみれば、編曲にも全面関与するダン・ハフ(G)を筆頭に、ジェフ・ポーカロ(Ds)&デヴィッド・ハンゲイト(B)のTOTO組、後にダン・ハフとGIANTを結成することとなるアラン・パスクァ(Key)ら、西海岸セッション・ミュージシャンの一流どころがバックを固めているじゃありませんか。こら聴かいでか!と。 実際、今も昔も変わらぬ小田の甘くクリアな歌声と、美麗に舞うボーカル・ハーモニー、どこか切なさを誘うメロディに彩られたAOR/シティポップ・サウンドはじっくりと浸れるクオリティの高さを有しており、特にシングル・カットもされた“1985”は、アーバンな哀愁纏った楽曲自体の素晴らしさと参加ミュージシャン勢の的確な仕事ぶりが相俟って、個人的にはアルバム・ハイライト級の感銘を受けた名曲に仕上がっていますよ。 こうなると引き続きダン・ハフが参加している小田の2ndソロ『BETWEEN THE WORD & THE HEART』(’88年)も聴くべきなのかなぁ…とボンヤリ考えているうちに20年以上が経過し、年号や世紀まで変わってしまったという。
1983年12月、"バラッド '77〜'82"の当初と同様カセットテープのみの形態で発売されたがCD化されず廃盤となったベストだそうな。現在までこのタイトル名義での作品は無く、原坊ヴォーカル曲やキーボード/ピアノが前面に出た曲が主体、かと思えば"ボディ・スペシャル II (BODY SPECIAL)"や"東京シャッフル"は全くそうではないし、名義はあくまでサザンオールスターズですから一体何なんでしょうねという世界。現物を知らず今更再発も望めない謎商品です。 side A 1. そんなヒロシに騙されて 2. かしの樹の下で 3. ボディ・スペシャル I (BODY SPECIAL) 4. ボディ・スペシャル II (BODY SPECIAL) 5. 南たいへいよ音頭 6. 私はピアノ side B 1. 東京シャッフル 2. 流れる雲を追いかけて 3. EMANON 4. シャッポ 5. Ya Ya (あの時代を忘れない) 6. NEVER FALL IN LOVE AGAIN