アルバム1曲目。タイトル曲や「Now I See」辺りの完成度を思うと、1曲目としては少し物足りないかも。エクストリームメタルとしての矜持を見せ付けるかのような、メロくないブルータルなパートがありますが、そこが1349と比べるとちょっと弱い。 とは言えメロディックなパートはやはり素晴らしい出来ですが。
出音的には、名盤である「Rasluka PartⅡ」や「Geliebte des Regens」とそこまで変わりませんね。インダストリアル・ノイズのようなジリジリとしたノイジーな音質やエモーショナルで繊細なメロウさが練り込まれたリフを繰り返していく作風、Kanwulfのマイクに噛み付かんばかりの声量のある歪み切ったヴォーカル…と、前述の作品で聴けたNARGAROTHらしさは不変なので、ファンならば安心して購入できる出来だと思います。
ただ、今回は前述の作品のようにメロウなリフを繰り返していく作風の曲だけではなく、メロウさや情感よりも攻撃性に主眼の置かれた、聴いているだけで憎しみが伝わってくるような曲やオールドスクールなリフを取り入れた曲なども取り入れて、ある程度バラエティに富んだ作風なので全体的な印象としては「Black Metal Ist Krieg」に近いかもしれません。「Black~」の路線を「Rasluka~」の音質でやった感じ、と言うと近いと思います。
Nattefrost氏による自殺一直線な歌詞が印象的な曲。 「Sell your soul~」の所のヴォーカルなんて、全身全霊を込めて恨み言を言っているような感じだわ…。ラストの「This confession has meant nothing…」の語りのサンプリング、KRIEGも使ってましたけどこれって何なんだろう…。
路線的には前々作の「Le Blanc et Noir」、前作の「Hands of Doom」等と同じく、耽美ゴシック&シンフォなキラーチューン。ですが10分と言う大作だったり、ギターもかなりフィーチャーされていたりより野心的な作風。メタラーもかなり気に入ると思います。 …しかし、10分もクサメタラーを悶絶させつづけるような曲を作ってしまうとは…そういう属性をお持ちの方は、心臓が止まらないようにお気をつけ下さい(笑)
この作品も、ALCESTやBLUT AUS NORDの近作と並んでブラックメタルの可能性が無限大である事を示した一枚といえるかもしれません。ブラックが好きで、ノイズにも抵抗が無ければ是非聴いてみてください。SEっぽい部分はちょっと長めですが、ブラックホールに接近するまでの宇宙遊泳だと思えば楽しめるのではないかと。