「Reign of Light」「Solar Soul」ではダンサブルなメタルというか、メタリックなダンス音楽になり、「Above」ではブラックメタルを回復したSAMAELでしたが…今回はその中間くらいの路線ですね。ダンス路線の、何千もの悪魔がマスゲームしてるような、邪悪ポジティブなエナジーを、ミディアムテンポで重厚なブラックに注ぎ込んだ感じで、雰囲気としては「Passage」「Eternal」に近いかも。
2011年発表の1st。 DAEKTHRONEの「Skold av Satans Sol」のカヴァーも収録。
ZERO DIMENSION発のDARKTHRONEタイプ国産プリミティブブラックとして、ブラック好きの間で結構話題になっている作品ですが、確かに2ビートのミニマルな疾走と邪悪さが滲み出すようなトレモロを軸に展開する曲構成といい、音割れのノイズが全体を覆っているようなガビガビした意図的な劣悪音質といい、喉が千切れんばかりに叫ぶヴォーカルといい、確実にDARKTHRONEから影響を受けている音ですが、単なるフォロワーでない、プラスαな魅力がありますね。
Mikko Aspa以前にDEATHSPELL OMEGAのヴォーカルを務めていた、Shaxul氏の在籍するバンドが遂に一枚目のフルアルバムを発表…という事で話題になってましたが、個人的にDSOは3rd以降のほうが断然好きだったので、最初はスルーしてしまってましたが…これ、プリブラの名盤ですよ。DSOの3rdにも匹敵するくらい素晴らしいアルバム。
路線は、フルートやハモンド、メロトロンなどを使い、暗い叙情性を演出する曲調に、クリーンとグロウルを使い分けるヴォーカルが乗る、プログレッシブなメロデスという感じで、OPETH辺りを引き合いに出したくなる音、キーボードがプログレッシブな妙味を引き出している分、BEFORE THE DAWNよりもOPETHに近いかな…と思います。どちらもOPETHより1曲1曲は短めですが。
1-9は「demo 1993」「demo1994」「demo Dark Promise」の音源。 まず曲名を見ると、「The Dark Promise」が4パターン、「Despair」が3パターンで4種類しか曲がないことに吹き出しそうになります(笑)。「The Dark Promise」は、プリブラには珍しい「ズンチ、ズンズンチ」なダンサブルなリズムに、妙にアングラでクリアなベース、邪悪なトレモロ、郷愁を誘う(かもしれない)メロディが絡む曲で、悪くないです。喉を潰しそうな無理矢理絶叫、疾走する展開もグッド。「Despair」は不気味なメロのギターインスト。「Twilight~」はジワリ歪んだギターに疾走もするプリブラらしい曲で、「Hatred」は不吉なアルペジオに絶叫が絡む閉塞感の強い曲。
一般的なエクストリームメタルファンよりも、トリップメタルが好きで、かつそのトリップ性をプリミティブ・ブラックに見出している人ならかなり気に入るのではないでしょうか。メロディこそ薄いものの、「Drawing down the Moon」期のBEHERITに、クスリの幻覚の中で神や魔と対峙するようなヤバさを覚える方にお勧めです。
ゴシック的な仄暗い邪悪さと美しさを備えたメロディと、緩急織り交ぜた展開でシアトリカル・コンセプチュアルな世界観を、まるで劇場にいるかのような臨場感をもって聴かせる作風は近年のCRADLE OF FILTHに近いものがありますが、このバンドは更に初期DIMMU BORGIRのムード作りの上手さまで兼ね備えているのが凄い。時々後期EMPERORのような、知性的な邪悪さの宿ったメロディも聴けるし、個人的にはシンフォブラックとしては非の打ち所がないです。
メロディのセンスはかなり良く、特に中近東っぽいメロディが印象に残る「Transformation within Fictional Mutation」などは出色の出来。ジワリと破滅が忍び寄るようなムードは、煌びやか、とは言い難いですが、「Midian」「Bitter~」期のCRADLEのようなホラーっぽい雰囲気があると思います。
個人的には、DISSECTIONやNAGLFAR、OLD MAN’S CHILD辺りと並んで「メロブラの代表格」扱いしても差し支えないバンドだと思います。最近KEEP OF KALESSINやISTAPPなど、良質なメロブラの日本盤がリリースされてますが、このバンドも日本盤を出して、日本のメタル好きにもその実力を知らしめて欲しいです。
そして何よりも感銘を受けたのが、あまりにも凄絶なヴォーカルワーク。 「Wolf’s Lair Abyss」期のMAYHEM風の粘着質な絶叫と、OCEANO並みにイカツイガテラルを両方使いこなしてます。それも他のバンドのお手本となるくらい高いレベルで。特にガテラルの方は聴いててこっちまで胃がせり上がってきそうなグロさ。まだ新人と言えるキャリアですが、ベテランのデスメタルバンドのヴォーカルを蹴落とさんばかりの凄まじさがある。
こういう(ブルースのルーツが見える)王道HRって、バンドがセッションを楽しんでるような、明るさがある(今作にも、ボーナスの「Nowhere to Run」はその傾向が見られる)のでどうも苦手だったんですが、この作品はそれがメロウさ、鬱なムードである程度打ち消されていて、結果HRのグルーヴやキャッチネスといった恩恵のみを享受しているのが、個人的な好みにもフィット。