付属のバイオグラフィーによると、「Genre : Melodic Death Metal」となってますが…確かに、リフにもしっかりメロディを練りこんでくるスタイルはメロデス的ですが、演奏の邪悪なマッシブさはデスメタル的でもあり、ブラス、キーボードを用いたシンフォアレンジやトレモロリフなど、シンフォブラック的なアレンジも見られ、各ジャンルの良いとこ取りと言える音になってますね。どこかゴシック的な頽廃性もありますし。
2ndでは、エキゾチックなキーボードとタイトなドラムが非常に特徴的なデス/ブラックを演っていましたが、約10年の時を経てもう別のバンドみたいな作風になってますね…。今作は、デスメタル的なドロドロした感触と、ブラックの毒性を上手く合わせたリフを、ブラストに乗せてブルータルにカチ込む、近年のBEHEMOTHやNON OPUS DEI辺りに通じるファスト路線。
DARK FUNERAL本隊とは明らかに差別化された音ですね。 刻みを多用する、メタリックな質感の強いリフを、ミディアムパートを中心に据えたリズムに乗せて進行する、重厚感のある音で、ブラックよりもメロデスに近い感じの作風。アトモスフェリックなキーボード、リフによる不穏さの演出、女性Voも一部取り入れたシアトリカルな部分等、ゴシックに通じる暗黒テイストも取り入れられているのも特徴ですね。
DARK FUNERALの苛烈な世界観を期待すると肩透かしかもしれませんが、メタリックな音作りの中での暗黒美の演出はそれなりに凝ったもので、個人的には悪くないです。(DARK FUNERALで)SLAYERのカヴァーでも敢えて遅い曲を演ってたくらいですし、こういう邪悪さの演出もきっと好きなんでしょうね。
このバンドは、何気にメロディセンスが素晴らしいと思う。 リフの合間を縫って挿入されるキーボードや、女性ヴォーカルのメロディが、ことごとく上品で美しく、しかも耳に残る。個人的には、「Midian」「Bitter Suites~」期のCRADLE OF FILTHに通じる、煌びやかさと耽美さ、キャッチーさがあるように思います。全体的に品のある雰囲気ですが、暴虐な所もしっかりあり、行儀が良過ぎないところも良いですね。
その後、ブラックメタルの本編に入って行く訳ですが…個人的にはこうしたポストブラック的なアプローチもありつつ、路線自体は絶叫ヴォーカルと疾走、トレモロリフで聴かせるという、スタイルそれ自体はブラックメタルをがっつり踏襲してくれるのが嬉しい。ギターノイズに常に包まれ、そこに儚いトレモロが乗るというスタイルは、WOLVES IN THE THRONEROOMやFARSOT辺りのバンドを思わせます。
邪悪さよりも淫靡…というか猥雑さを感じさせるタイトルやブックレットのコメント、パーソナリティが前面に押し出されたバンド名などから、GORGOROTHやTRELLDOMとは違う方向に行くかと思いましたが…意外とそうでもないですね。ジャリジャリした摩擦リフを伴った疾走、邪悪でメロウなトレモロリフ、オールドスクールな要素も強い曲作りと、「True Norwegian Black Metal」以外の何物でもない音。ぶっちゃけあまりエロティックさとかは感じません(笑)。
やはり伝説的な人物のバンドだけあって、纏う雰囲気が一流ですよね。 Gaahlの悪意を押し付けるような、がなりというより怒鳴り声に近い狂的なヴォーカル、「Great Joy」で見せる、GORGOROTHのクラシックな名盤の収録曲と比較しても、何ら遜色のないメロディを練りこんだリフ捌きなどは、それだけで場の空気を塗り替えるようなエネルギーに満ちてると思う。この圧倒的な感じこそが、「True Norwegian Black Metal」なんだな、と思います。
ただ、後続に多大な影響を与えたBURZUMのクラシックな名曲「Det Som Engang Var」が、フレーズもムードも圧倒的なものがあったのに対し、このバンドは淡いギターノイズを含むリフの波でリスナーの気分を凹ませ、そこに物悲しげなメロディをうっすらと流して更に追い討ちを掛けるスタイルで、やはりBURZUMとは「似て非なるもの」だと思う。
路線は、BURZUMの獄中作やSATYRICONのSatyrのWONGRAVENなどに近い、メロディアスなシンセ・アンビエントと、4つ打ちのリズムにサウンドトラック的な分かりやすいメロディを乗せた、インダストリアル曲の2つが中心。ラストの曲だけはノイズ系のカオスな音ですが、全体的に割と聴きやすい感じ。ヴォーカルも入っており、特に「Sign of the Dark」では、マイルドに、威厳を持って歌い上げる、Jonのクリーンヴォーカルというレアなものまで聴けてしまいます。