路線としては、初期JANNE DA ARCやラルク、MALICE MIZER等に通じる、キャッチーな歌モノをベースに、シンフォ・ゴシック的なキーボードとメタリックなリフ・リズムでアレンジした感じで、曲によってはエレクトロ・ゴス的なアプローチも。Being発、しかもエンターテイメント的なコンセプトを持ったプロジェクトという事で、色眼鏡で見てる人はまずこのリフの音色とフレーズがしっかりメタルしてることに驚くと思う。
2011年発表のEP。 CD盤はDROWING THE LIGHTとのスプリットの曲も収録。 …と言っても、その曲を入れても3曲約16分で、割と短め。
しかしこれ、3曲しか入ってないのが本当に惜しいですよね。彼らの標榜する、「True Occult Black Art」、その言葉が指し示すとおりの、神秘主義の深淵を垣間見るかのような、邪悪極まりないブラックメタル。毒々しく密教的なトレモロや邪悪な存在からの啓示を受けているようなアルペジオなど、構成パーツや音像など自体は特に衒いのないブラックなんですが、聴き手の想像力を喚起する力が半端ない。
ちなみに、上記のバンド以外にEMPERORも引き合いに出されてましたが、シンフォ要素は特になし。ただ展開の凝り方に、僅かに共通する部分はあるかもしれません。個人的にはドイツのSECRETS OF THE MOON辺りが好きな方にもお勧めしたいところ。メタルとして質が高い中にも、ミステリアスで深遠なムードがある作風が似てると思う。
タイトル曲の「Moon Addict」は、出だしから荘厳なキーやクワイアが入り、メロディもより耽美色の強い曲で、ジャパメタ好きのみならずV系好きもすんなり入れそうな感じ。カップリングの「Rip My Wings」はイントロからツインリードの印象的なメロディが登場、サビも飛翔感がある、感性的にメロスピと通じるものが強い曲で、どちらもかなり良い曲だと思う。この2曲で500円は正直安いと思うので、興味ある方は是非。
2003年発表のコンピレーション盤。 97年のデモ「When the Wind Blew for the First Time」と99年のフル「Towards the Frozen Shadows」、01年EP「Woodland Passage」の3つの音源を収録した、約78分の長大なボリュームの音源集。ちなみに音源集のタイトルは書かれていないんですが、調べたら「History」というタイトルだそうです。
しかもリフもメロデスのメロディックで高揚感溢れるものと、メロブラのメロウなトレモロの良いとこ取りでかなりキャッチー。これが前述のど派手な装飾(装飾ってレベルじゃないけど)を連れて疾走するのだから、クサメタル好きにはたまったものではありません。例えて言うなら、CRADLE OF FILTHの中でもキャッチーな「Her Ghost in the Fog」「Swansong for a Raven」辺りの路線を拡大解釈してアルバム全編に適用させたような作風。
このバンドはアトモスフェリック系のシンセだけでなく、ピアノの音色も多用してますが…そのメロディのセンスが尋常でなく素晴らしいんですよね。特に2曲目の「Macabre Be Thy Blood」で繰り返し聴けるピアノのメロディは、儚さ、絶望感、美しさ、毒々しさの全てが、キャッチーと言っても過言ではないくらい分かりやすく込められていて、聴いているだけでアッチの世界から喚ばれている感じがしてきます。
ショップやネットの評価でも、最近のメジャー路線のKEEP OF KALESSINの良質なフォロワーが現れたと評判になってて、「これはチェックせねば」とCD買いに走りましたが…確かに「Reclaim」EP以降の、スラッシーに刻み込む、攻撃的かつ繊細でメロいリフワークを主体で攻めるスタイルのブラックで、インスト明けの2曲目からいきなり機銃掃射のようなリフが胸を熱くさせますね。
何気にヴォーカルの表現力が高いのも個人的にツボなポイントですね。 ブラック特有のがなりスタイルながら、恨みと憎しみに囚われた亡者が腐った肉を引き摺りながらもがいているような、粘着質で真に迫った感じがある。特に凄まじいと思ったのは「All Praise to Thee」で、恨み以外の感情を全て捨てて、遺恨のみを吐き出し続けているような、異様な迫力があって素晴らしい。歌った後暫くはあっちの世界から帰ってこれなそうな感じ。
ちなみに当時はライブではKEEP OF KALESSINやANTARES PREDATORに籍をおいた経験もあるGhash氏が加わり、このアルバムでも「Truth is Truth, Beyond the God」に参加してますが、それらのバンドのようなメタルとしての真っ当さは皆無で、徹底して地下臭い雰囲気を醸し出してます。アングラなブラックをある程度聴いている方にはお勧めです。
ただ、このバンドのスタイル自体は個人的には好きなんですが、曲によってクオリティにバラつきがある気がするんですよね…。「Odial」「Press the Pressure」「Witness of Delusion」辺りは緊張感があって、このレベルの曲が並んでいれば素晴らしい作品だったかも…と思わされますが、アルバムを通して聴くとダレる箇所も多いのが惜しい。もう少し曲を練り、取捨選択をしてくれれば名盤になったかもしれません。
裏ジャケに燦然と輝く「True Norwegian Black Metal」のロゴや、TAAKEのHoestが参加してることからも予想が付く通り、大分TAAKEに近い音ですね。割と辛口でRAWな音作りをしながら、プリミティブ系とは一線を画す、ギターソロも入る展開のある曲作りが似てると思う。痰を吐くかのような喚き散らすヴォーカルも、Hoestのスタイルに大分影響を受けていそうな感じがします。
ただこちらはTAAKEよりも曲や音の作りが粗く、丁度初期DARKTHRONEのムードを足したような感触があるんですよね。粗さだけでなく、あの頃のDARKTHRONEが持っていて、多くのフォロワーが出せていない、独特の刺々しい雰囲気まで受け継いでいるのが素晴らしいと思う。「True Norwegian Black Metal」のロゴを掲げるのに相応しい音を出してると思います。
サンクスリストを見ると、日本や韓国のバンドに交じってBATHORY、BURZUM、DISSECTIONの名前があったりしますが、このバンドもそれらの初期ブラック、とりわけDISSECTIONに多大な影響を受けたであろう、メロディックなスタイルのブラック。一部「Where Dead Angels Lie」へのオマージュっぽい部分もあるのがなんか微笑ましいです(笑)。ただDISSECTIONと比べると、こちらはミディアムパート中心に曲を展開させたり、全体的にメロディにほんのりペイガン色があるのが大きな違いですね。
他にも、最近のCRADLE OF FILTHの曲のクライマックスで使われそうなギターメロが唐突に登場したり、ゴシック趣味の強い耽美なピアノを大々的に取り入れてみせたり、催眠的なメロディをパーカッシブなリズムに乗せたり、とにかく一筋縄ではいかない展開が多いのが特徴。ただ、キーボードやトレモロリフがメロウなフレーズを弾くパートや、突飛な仕掛けを施したパート以外の部分は、ヴォーカルの殺る気のなさも相俟ってちょっと凡庸に聞こえてしまうかも。