作詞がつんく氏で、作曲が外注というのは結構珍しいのでは。作曲は真野恵里菜さんに「My Days for You」を提供した中島さんが手掛けているだけあって、普遍的なポップスの魅力がありますね。曲だけ聴くと昔のBeingとかにありそうな感じ。我を張りまくるような曲調の多いアルバムの中では少し地味目に聴こえなくもないですが、単品で聴くとかなり良い曲だと思う。
マンドリンなども取り入れた、カントリー風アレンジの曲。つんく氏はBuono!の「Take it Easy」でも似た曲調を演ってましたが、こっちの方がもっとゆるい感じ。「オッホッホ~!」「ウ~~、オッホッホ~!」のつんくコーラスが楽し過ぎる(笑)。個人的にこういうカントリーちっくな優しくゆるいメロディと、アイドル歌唱の組み合わせって好きかもしれないです。聴くのに変に肩に力を入れる必要が無くて、癒されるというか…。メタルの合間にこういう曲も良いですよ。
吸血鬼がテーマのブラックというと、CRADLE OF FILTHが有名ですが、流石にあちらと比べると音作りや曲展開などは正直チープさを感じざるを得ません…が、その分一回聴いただけで世界観を共有できるような、分かりやすい感じがあるんですよね。COFが聖書や史実等もモチーフに世界観を展開するのに対し、こっちはヴァンパイアに特化している感じがするのも、分かりやすい一因かもしれませんね。女声ソプラノと男声のマイルドな声によるクリーンパートもかなり直接的にゴシックな情景を描写してますし。
ただ、個人的には硬派過ぎるんですよね…。叙情トレモロ全開な「Forest Legion」辺りは別ですが、全体的にケレン味に欠けるというか。通して聴いてると、ラストで如何にDISSECTIONの「Where Dead Angels Lie」がフックに満ちた名曲かを見せ付けられてしまうので、THEOSOPHYのアルバムとしてはちょっとどうかと思う構成ですね(苦笑)。まあこの飾らなさが良いというのも分からなくはないですけど。
路線としてはREGARDE LES HOMME TOMBREやTHE GREAT OLD ONESなど、Les Actuers L’Ombre勢なんかが好きな人は気に入りそう…と思いますが、こちらの方がより人を寄せ付けない感じ。そういえば、最新作は未聴ですが、Season of Mistからのリリースだとか。何気に出世頭のバンドなのかもしれません。
前2作では、叙情性と邪悪さに富んだリフが特徴のメロブラを演っていて、特に「Marching Order」や「Kill for Paradise」などでは、キャッチーと言ってもいいほどフックのあるリフが聴けましたが…やや薄めかつノイジーなプロダクションで、メジャーなメロブラよりも淡くて、抽象的な印象の彼らでしたが、今作はギターの音圧を上げると同時にメロディを聞き取りやすくする、ドラムの音量を適正かつ音の抜けを良くするなど音質面がより強化され、以前よりも大分聞きやすくなった感じがします。
確かに生々しい音質ではありますが、WARブラックとかを普段聴いている人にとっては何の問題も無く聴ける音だと思う。贔屓目かもしれませんが、このころからやっぱり「持ってる」感じがするんですよね。「Wrath of the Tyrant / Emperor」を含む、EMPERORのアルバムを全て集めているようなEMPERORファンは、こちらも是非買うべきだと思います。