MAYHEMのメンバーが二人在籍していることからも分かる通り、当時のMAYHEM(GRAND DECLARATION OF WAR)の路線である、ミリタリーな雰囲気のある、テクニカルなインダストリアルブラックを演ってますね。アンビエント的な要素も含む、やや前衛的な展開はTHORNSの1stからの影響も強そう。
でも、頭をクリアにしてもう一度聴いてみると、これはこれで良いと思えるように。 後半多用されるトレモロは相変わらずメロウだし、音が太く(ふてぶてしく?)なった事で邪悪さはむしろアップしていると思うし、CRAFTにも通じるリフの歪め方に拘った音作りやWATAIN、SECRETS OF THE MOON辺りに通じる低音質に頼らないどす黒い禍々しさなど、今までに無かった魅力も備わってきているように思います。
2005年発表の音源集。 98年のデモ「Ring to Rune」、2000年のデモ「Winter of Tragedies Reign」をまとめ、リマスターを施したもの。
このバンド、BEHEXENやSARGEISTを始め、HORNAやMORTUALIA、FINNENTUMなど数多くのバンドに関与し、NIGHTBRINGERやDROWING THE LIGHTなど知名度の高いバンドにも関わっていた、フィニッシュ・ブラックの裏番長的存在ともいえるShatraug氏が正式メンバーのペイガンブラック…という触れ込みですが…そんなハクの付いた出自とは裏腹に、余りにも渋いというか…ぶっちゃけ地味な作風です(笑)。
某所にて、今年発表の新作だったにもかかわらず、かなりの安値で投げ売られていたので購入。このジャケにこのアルバムタイトル、そしてイタリアのシューゲイザー/ポストブラックという触れ込み…如何にもアトモスフェリックな空間を演出して、寒々しく神秘的で深遠な世界観を感じさせてくれそうじゃないですか…ところがどっこい(笑)、STALAGGHやBLUT AUS NORD以上に付いていけない、摩訶不思議なサウンドでした…。
いきなりクッサいリードギターが入るオープニングといい、ギターが引っ込んでピアノとヴォーカルを前に出した「引き」の展開を入れたりといい、衝撃のデビューミニのラストを飾るに相応しいドラマティックな曲。「The tide of time」「at my wit's end」はX JAPANリスペクトでしょうか。2曲目にも「青い涙」とかあったし。
仰々しいクラシカルなオープニング曲から繋がって始まる曲。 Moi dix moisらしい荘厳メロディ&アレンジで疾走する曲ですが、とにかくアレンジが素晴らしいです。雰囲気たっぷりの女性ヴォーカルは作品をより壮麗に昇華しているし、ギターもメロディアスに主張していて良い感じです。日本のインディーズ界にここまでのアレンジ能力を持ったアーティストはManaさんを除いてはあまりいないのでは!?
07年発表のフル「A Journey to the Vyrdin」からの音源を中心に、スプリット提供曲や未発表曲を詰め込んだ、70分を超える大ボリュームの内容。店の歌い文句によると…このバンドはSILENCERやSORTSIND、辺りにも匹敵する、狂気じみた悲痛絶叫が聴ける鬱ブラックとして評価されている、とのことですが…
VED BUENS ENDEがどこかサイコっぽい雰囲気を漂わせていたのに対し、個人的にはこちらはオカルトめいたおどろおどろしさを感じるんですよね。絶叫するだけでなく、生気のない声で語りかけるようなヴォーカルも楽曲の不気味さを助長。レーベルがレーベルだけに、VED BUENS ENDEやVIRUSよりも、ストレートなブラックの色が濃く、これらのバンドが持つ不条理さだけでなく、ブラック本来の邪悪さも両立させている印象。
2ndでは、エキゾチックなキーボードとタイトなドラムが非常に特徴的なデス/ブラックを演っていましたが、約10年の時を経てもう別のバンドみたいな作風になってますね…。今作は、デスメタル的なドロドロした感触と、ブラックの毒性を上手く合わせたリフを、ブラストに乗せてブルータルにカチ込む、近年のBEHEMOTHやNON OPUS DEI辺りに通じるファスト路線。
FULLMOONとかもそうですが、こういう音って意図的にやってるんでしょうか…。 ちなみにラスト3曲、「We are at War!」の音源は音が更に劣悪(笑)。メロディが引っ込み気味だったりするのは良いとして、面白いのはヴォーカル。割れまくりでヴォーカルが入るたびに歯医者で歯を削られるような妙なノイズが入ってます。初めは何じゃこりゃって感じでしたが、暫く聴くうちにノイズ表現としてアリかも…と思うように。
…これを聴いて私が思い知らされたのは、「(真性)デスとメロデスの違いは単にメロディの多寡によって決まるものではない」という事。「Ageless, Still I Am」なんて全体的にかなりメロディアスですが、明らかにメロデスとは雰囲気が違いますよね。メロディがメロデスのような「泣き」「哀愁」に全く向かっていかず、只管に禍々しくて邪悪。リフが意志を持って蠢いた結果、それがメロディに聴こえるような感じ。こういう恐ろしさを感じさせるリフ捌きだけでも帝王と呼ばれる資格は十分にあると思いますが、それを際立たせる他パートの構成やプロダクションのセンスもあるんだから、もう向かう所敵無しでしょう。
基本的にはゴシック的な耽美さ・怪奇さを含んだメロディが売りのシンフォニック・ブラックという感じですが…このバンドはキーボードだけでなく、SIRENIAやTRISTANIAにも在籍したMaestro Pete Johansen氏による生のヴァイオリンも入っていて、それがバンドが元々持っている耽美なメロディセンスを更に押し上げている感じですね。アンティークで上品な雰囲気、しかしどこか恐ろしさも感じさせるメロディは聴いていてうっとりできます。
某CDショップ…っていうかDISK HELLの入荷情報掲示板で、まだアングライズム前回だった頃のCRADLEやDIMMU、Nocturnal Art Production所属バンドなどが引き合いに出され、90年代のブラックの妖しさを継承した、近年のメジャー志向のシンフォ系のバンドとは確実に一線を画す新人バンドの登場…と、大絶賛で紹介されていたのでご存知のマニアの方も多いと思われますが…私もその口車に見事に乗せられ、CDを購入したクチなんですが(笑)、これは良いですね。